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グレート・リセット

はじめに

新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)は、近代史上前例のないグローバルな次元で、マクロレベルの経済、社会、政治、ミクロレベルの産業、企業、さらに個人レベルの生活、生命まで劇的な衝撃を与えている。

もう、コロナ前にも戻れないという覚悟をもって、我々は、どこへ向かっていくのか、向かっていくべきなのか。問題提起をしたい。

グレートリセットとは

このことを象徴する言葉(キーワード)が、「グレート・リセット」だと思う。「グレート・リセット」は、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)のテーマになっている(2021年5月開催予定)。このテーマについて、WEFを創設したクラウス・シュワブ会長が、記者の質問に対して以下のように答えている(日本経済新聞2020年6月3日より)。

①「グレート・リセット」とは何を意味しますか。

⇒「世界の社会経済システムを考え直さないといけない。第2次世界大戦後から続くシステムは異なる立場のひとを包み込めず、環境破壊も引き起こしている。持続性に乏しく、もはや時代遅れとなった。人々の幸福を中心とした経済に考え直すべきだ」

⇒「コロナ禍による失業などの経済危機を乗り越えようと(各国政府は)債務を増やしている。これはいずれ未来の世代が払うツケであって、ある意味では彼らへの裏切り行為だ。次の世代への責任を重視した社会を模索し、弱者を支える世界を構築する必要がある。気候変動など危機への対応力や、新技術の発展に向けた規制の枠組みも考えないといけない」

②リセット後の資本主義はどうなりますか。

⇒「資本主義という表現はもはや適切ではない。金融緩和でマネーがあふれ、資本の意味は薄れた。いまや成功を導くのはイノベーションを起こす起業家精神や才能で、むしろ『才能主義(Talentism)』と呼びたい」

⇒「コロナ危機のなか、多くの国で医療体制の不備が露呈した。経済発展ばかりを重視するのではなく、医療や教育といった社会サービスを充実させなければならない。自由市場を基盤にしつつも、社会サービスを充実させた『社会的市場経済(Social market economy)』が必要になる。政府にもESG(環境・社会・企業統治)の重視が求められる」

マクロレベルのリセット

ダボス会議の分科会メンバーでもある山口周氏は、著書「ビジネスの未来」(2020年 プレジデント社)の中で、シュワブ氏の発言の意図するところを、次のように述べている。

「「資本主義という表現はもはや適切ではない」という言葉について、少し補足をしておきましょう。「資本主義」というのは、「資本は無限に増殖する」ということを信じて奏するという一種の信仰です。シュワブは、資本がもはや過剰になり増殖できなくなった以上、この信仰はもはや維持できなくなった、と言っているのです。」

このように、マクロレベルのリセットでは、GDPの右肩上がりの成長を目指すシステム(無限の成長を前提とするシステム)から、寛容で持続可能な経済、人々の幸福を中心とした経済に転換すべきである。
この視点から言えば、菅内閣の新成長戦略にある2050 年までのカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)実現は、ポストコロナ時代の経済を質的にシフト(GDP成長絶対主義からの脱却)させる原動力になるのではないかと思う。

ミクロレベルのリセット

ミクロレベルのリセットで産業、企業に視点を転じてみると、あらゆる業界のすべての企業に、ビジネスや働き方など新たな経営へのシフトを強いられることになる。

そこで、在宅勤務(テレワーク)の状況をみてみたい。日本経済新聞社が2020年秋(10月~11月)に実施した郵送世論調査(日経リサーチが18歳以上の男女を無作為に抽出、1696件の回答を得る、有効回答率56.5%)によると、「在宅勤務を定着させるべきだ」と答えた方は56%に上った。年齢別にみると若年層ほどその割合は高かった。



また、在宅勤務は、管理職の負担が増えるという指摘もある。世帯年収1千万円未満の層は、労働時間が1年前よりも「短くなった」の割合が多いが、1千万円以上(厚生労働省の統計で従業員1千人以上の課長級年収に当たる)では、「長くなった」が上回った。



日本産業カウンセラー協会では、「在宅勤務の部下に仕事頼めず残業が増えた」という相談が増えている。同協会では、「管理職の負担増に配慮が必要だ」と指摘している(日本経済新聞2021年1月12日の記事より)。

テレワークを前提とした多様な働き方が広がっている中で、家庭内暴力、安全なテレワーク環境の整備、心と体の健康管理(特に人と合わないストレスと運動不足)、心理的安全性を実現する組織内のコミュニケーション、OJTの機能不全(特に新入社員の育成)などの課題も生じている。

テレワーク以外では、シュワブ氏の言葉を借りれば「ステークホルダー資本主義」、つまり、株主だけでなく社員、顧客、社会などのすべてのステークホルダーのために事業を行うことが、企業の責任としてますます重要となる。

個人レベルのリセット

最後の個人レベルのリセットについては、個人がどう意識を変えて、行動変容ができるかどうかが問われている。新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、私たちの存在を揺るがすような危機に直面したことは、自分の存在(あり方)を、根源的に本質的にも内省する機会を与えてくれたとも言える。このことが、個人レベルのリセットにつながる。

山口周氏は、著書「ビジネスの未来」の中で、経済合理性にハックされた思考・行動様式を、喜怒哀楽に基づく衝動(「そうせざるにはいられない」という強い気持ち)によって再びハックし返すことで、永遠に循環する“いま”を豊かに瑞々しく生ききるという自己充足的・行動様式への転換を提言している。

シュワブ氏が「資本主義から才能主義への転換」と述べたが、山口氏は、才能とは個性のことで、各自の衝動に基づいて発揮する個性が、社会をより豊かで瑞々しいものに変えていく。そういう未来を才能主義と言っていると解説している。

「しゅうかつモデル」と「ある・なる・いる式の人生設計」

私は、Beyondコロナを見据えて、人生百年時代の人生の課題は、働き方、生き方、学び方をリデザイン(グレートリセット)することだと捉えている。
具体的には、拙著「もし、アドラーが「しゅうかつ」をしたら―人生を豊かにするキャリアデザイン―」(幻冬舎 2021年2月出版)で、「しゅうかつモデル」と「ある・なる・いる式の人生設計」をリデザインとして提言している。

このモデルのベースは、アドラー心理学とキャリアデザインを掛け合わせものである。
しゅうかつモデルは、就活、習活、充活の三つのしゅうかつが動態的(行動的)にスパイラルアップする成長モデルである。就活は、働く目的と自己認識を深めた働くことを大切にする活動を、習活は、社会が求める人財になる活動を、充活は、自分を磨きよりよく生きる活動を意味する。

ある・なる・いる式の人生設計は、しゅうかつモデルをメタ認知(モニタリングとコントロール)する存在論的にスパイラルアップする統制モデルである。
具体的には、就活では、自分はどう有(あ)りたいのか、習活では、自分はどう成(な)りたいのか、充活では、自分はどう意(い)たいのかを自分自身に問いかける。漢字と英語で表現すると、「有る(be)-成る(become)-意る(being)」で、Beには存在、Becomeには相応、Beingには本質の意味がある。

最終的には、この二つのモデルは、スパイラル・ハイブリッドモデルとして統合されてブレない骨太の自分軸を形成する。この自分軸を駆動するのが、SQ(魂の知能指数)である。SQとは、人生に意味を見出す能力で、魂を鼓舞する(奮い立たせる)根源的な生命エネルギーである。これは、山口周氏の「喜怒哀楽の衝動」と同じ考え方である。

このSQを駆動軸としてキャリアをデザインことで、より豊かで自分らしい人生を描くことができる。このキャリアデザインは、「Being Career By SQ Driven」で、意訳すれば、魂を鼓舞して意味で充たされた自分らしい自分(本当の自分)を生ききることである。

最後に

コロナ禍の苦しみにも人生の意味を見出して(SQを発揮して)、自分の衝動に気づき、自分らしい人生を拓くことができる社会(人々の幸福を中心とする社会)にできるかどうかの転換点に我々はいるのだと思う。そのためにも、個人レベルのリセットが必要なのである。



以上

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