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「アンコンシャス・バイアス」マネジメント

著者 守屋智敬

発行 かんき出版

2019年5月22日 第1刷発行

(一社)アンコンシャスバイアス研究所 代表理事

(株)モリヤスコンサルティング 代表取締役

(1)アンコンシャス・バイアスを「①知る」

 アンコンシャス・バイアスは、無意識の偏見、無意識の思い込み、無意識の偏った見方等のさまざまな言葉で表現されますが、正体は、「自己防衛心」です。
 アンコンシャス・バイアスは、「脳がストレスを回避するため」に、脳が無意識にうちに、自分にとって都合の良い解釈をすることによって起きています。したがって、アンコンシャス・バイアスは、自然の摂理であり、あること自体には問題はありません。むしろ、それに気づこうとしないことが問題です。
 アンコンシャス・バイアスは、メンバーのモチベーションを下げ、チームは停滞ムードを起こします。
 したがって、アンコンシャス・バイアスに気づこうとすることが、組織をよりよく変えるはじめの大きな第一歩、きっかけとなります。

(1)-1 リーダーが意識しておきたい代表的な15のアンコンシャス・バイアス

アンコンシャス・バイアスは、職場の人間関係や仕事に影響するものとキャリアや成長に影響するものに分類されます。

(2)アンコンシャス・バイアスに「②気づく」

自分のバイアスに気づき、そのバイアスが周りにどんな影響を与えているかを自覚することを自己認知と言います。自己認知は、「自分のことに気づこうとするかどうか」の心のもちようの問題です。リーダーは、この自己認知能力を高めることが大切です。自己認知を高めるためには、自分の「確信」を疑うことから始めます。
 アンコンシャス・バイアスは、「決めつけ」と「押しつけ」の言動に表れます。自己防衛心から、人は無意識に決めつけたり、押しつけたりしています。
 決めつけの言動の事例として、「普通そうだろう」⇒価値観の決めつけ、「そんなことできっこない」⇒能力の決めつけです。
 押しつけの言動の事例として、「つべこべう言うな」⇒解釈の押しつけ、「これくらいできて当然」⇒理想の押しつけです。

(3)アンコンシャス・バイアスに「③対処する」

対処の基本は、以下の8つの視点で「意識化」することです。
 1)言われた相手の「心の後味」に目を向ける
 2)「なぜ?」ではなく、「何が大切?」と未来に向けた質問をする
 3)「今・現実」を意識する
 4)バイアスを意識的に上書きする
 5)「プラス面」に意識を向ける
 6)「セルフイメージ」を上書きする
 7)「あともう一つの情報は?」、「別の情報は?」を意識する
 8)新たな経験で上書きする

(3)-1 お互いのバイアスに振り回されないチームになる

 次に、お互いのバイアスに振り回されないチームになることです。言葉を変えて言えば、お互に自分の無意識の思い込みに気づこうとするチームになることです。気づきは、メンバーがいるからこそ生まれます。相手からのフィードバックと向き合うことが大切です。
「これって、アンコンシャス・バイアスかも?」を共通言語にすることで、一人ひとりの変わる勇気につながります。
 リーダー自らが、アンコンシャス・バイアスを自己開示して心理的安全性を担保します。「何をいっても大丈夫」と思えるチームには心理的安全性があります。
 リーダーが自己開示する姿や、リーダー自らが変わろうとする姿(相手を変えようとするのではなく)が、やがては周りを巻き込んでいくことに繋がります。自分から変わろうとする心のもちようが、相手の気づきを深める影響力になります。
 集団思考を抑制するフードバック・ループをチームで回します。ネガティブに思える声ほど受け入れられる風土をつくります。
 相手の解釈は、自分とは全く違う可能性があるので、お互いに確認し合います。違いを言葉に出し、違いを受け入れる勇気を持ちます。
 自分のバイアスに気づくには、心の余裕をつくり、冷静になって自分を振り返る必要があります。余裕がなくなると、バイアスに振り回されます。時間・仕事・コミュニケーション・心理的な余裕は、リーダー次第で生まれます。
 リーダーは、自己防衛ではなく、「受容の心」を意識して、メンバーが大切にしていることをリーダーも大切にします。

(4)感想

 会社では、ダイバシティ―&インクルージョンが経営課題として挙げられることが多いです。多様性を受け入れることができる会社の懐がいかに深いか(広いか)が問われているのだと思います。この経営課題を解決する一つのキーワードがアンコンシャス・バイアスではないでしょうか。つまり、アンコンシャス・バイアスを意識化することで、自己理解と他者理解をすることが、その組織(職場)の心理的安全性を生み出し、個が輝くワンチームになるということです。
 人間である以上、脳の防衛本能からアンコンシャス・バイアスが生じるのは自然の摂理です。一人ひとりが、アンコンシャス・バイアスに気づき、どう向き合うか、どう上手くコントロール(上書き)するかが今後重要になってきます。特に、リーダーは、自己認知能力、メタ認知能力を高める必要があります。
 アンコンシャス・バイアスを、ネガティブケイパビリティと位置付けることもできます。人間の内面(心のシャドーも含めて)まで深く入っていかなければ、本当の自分は見つからないのかもしれません。

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