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「定年後知的格差」  時代の勉強法

著者 櫻田 大造

発行 中央公論新社

関西学院大学教授・大阪大学博士

(1)知的格差を解消する能動的知的生活

 人生百年時代、知的格差は、経済格差と比べて軽視されている感があります。「人生百年時代をどのようにして知的に生きるか?」が本書の課題です。
 結論を先に言えば、勉強を中心とする能動的知的生活を送ることです。知的生活には、受動的知的生活と能動的知的生活に分かれます。前者は、本やウエブなどで情報を集め、それを話題として取り上げること。後者は、それにとどまらず、それらの発見を記事、論文・ブログ・本などにまとめたり、受講生相手に教えたりすることです。
 大学(院)の活用を勧めます。今こそ大学(院)を活用する絶好の好機です。なぜなら、三つの追い風、すなわち①働き方改革、②Web会議、③少子化による大学(院)定員割れの風が吹いているからです。
 3つの風を具体的に言えば、①働き方改革で、勉強する時間が増える、②Web会議で大学(院)での指導が受けやすくなる③少子化による大学(院)入試のハードルが下がることになります。
 ジョハリの窓から、自分自身と知的生活を関連しています。受動的知的生活は、自分だけの愉しみとして勉強や読書をすることから始まるので、秘密の窓に該当します。
 次に、独学などでブログや論文を書き始めると、他人も知っている開放の窓に移ります。さらに、大学(院)の授業などで指導を受けると、他人は知っていて自分には自覚がなかった盲目の窓に行きます。
 最後に、論文や本の執筆、大学(院)などで教え始めると、それがさらなる学びや自己啓発に繋がります。これは、自分の知的可能性の探求そのものであり、自他ともに知らなかった未知の窓に遭遇します。

(2)定年前後のマイペース博士号取得方法

 博士論文を含めて長い文章を書くコツは、機械的・自動的に毎日書いていくことです。例えば、週5日、資料やデータ収集をかねて、約4時間平均で執筆活動に充てるです。
 次に、10万文字以上の博士論文を一気呵成に書き下ろすというのが難しい場合は、紀要や学術誌に分割して書ける範囲での学術論文を投稿することです。
 博士号の取得が固まったら、どの教授に自分の指導教授になっていただくかが大事です。選定で大事なことは、その教授が、自分と主な考え方や学問に対するアプローチの仕方が一緒、性格も温厚で、自分に合致した指導をしてくれることかどうかです。また、指導教授がいつ頃定年を迎えるかも視野に入れなければなりません。
 テーマ設定では、自分が集中できるもの、調べたり書いたりの能動的知的生活をワクワクしながらできるモノが良いでしょう。
 博士論文を仕上げるための執筆に関する注意事項は、以下の3点です。
 ①序論(章)と結論(章)を読んで、八割くらい中身がわかること
 ②段落をトピックセンテンスから書き出す=結論最初主義で行くこと
 ③先行研究評価を入れること

(3)学びのマネタイズ法

 大学非常勤講師になる方法では、公募からめざすなら、JREC-IN Portalで検索して探します。非常勤講師は、1コマ90分か100分の授業を担当しても月大体3万円前後の税込み収入にしかなりません。
 次に、カルチャセンター(商工会議所なども含む)などで教えることも面白いでしょう。
 セカンドキャリアとしての大学教員になることを考えます。日本の大学は定年制を廃止していないので、新規参入者にとっては有利です。
 キチンとした能動的知的生活を送ると、鈍才でも博士号を取得できるし、大学教員になることも夢ではなくなります。

(4)感想

 定年後「知的格差」という言葉が衝撃的でした。定年後の人生で、我々は何で充たされたいと思うのであろうか。おそらくお金(生活上必要なお金以上)ではなく、知的好奇心だと思います。そのためには、人間は学び続けることや学び直すことが必要です。
 今の能力で十分とするfixed mindsetではなく、まだまだ伸びしろがあるとするgrowth mindsetでなければなりません。
 知的好奇心で自分の器が満たされたら、それを他人のためにそれを放出する(教える)ことが、本書で言う能動的知的生活をすることです。そこには、他者に貢献するという自己満足や幸福感で充たされるはずです。

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