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もし、アドラーが上司だったら

著者 小倉 広

発行 プレジデント社

2017年3月11日

アドラー派の心理カウンセラー、組織人事コンサルタント

(1)もし、アドラーが上司だったら

第一章
アドラー心理学は、勇気の心理学とも呼ばれています。
人は勇気があれば困難を克服しようと、努力や学習、協調など有益な行動を選択します。

人は周囲の人々へ貢献できていると実感したときに、自分には価値があると実感し、勇気を持てます。

アドラー心理学では、勇気と共同体感覚は、二軸であるとともに、相互依存関係にあります。
人の成長は勇気から始まります。

第二章
リフレーミングとは、認知の枠組みを再び設定するという意味です。

アドラーの影響を受けたアルバート・エリスが提唱したABC理論では、無益な感情や行動を変えるには「できごと」ではなく「非合理的な信念」を合理的なものに置き換えることです。

第三章
ネガティブな感情を押し殺してはいけません。否認、抑圧、歪曲せずに、きちんとありのまま、そのままに見ます。自分に正直であることはとても重要です。

これを、カウンセリングでは、自己概念と体験を一致させる、自己一致と呼びます(カール・ロジャースの来談者中心療法)。アドラー心理学の全体論と極めて親和性が高いと言えるます。

第四章
問題の原因を他者や環境のせいにして自己正当化することをアドラー心理学では認めません。すべて自分が決めたこと、すべては自分が決められる、と考えます。

アドラー心理学では、過去は一切関係ないのではなく、過去の原因は影響要因として存在するかもしれませんが、決定因は自己にあると考えます(柔らかな決定論)。

第五章
アドラー心理学では、欠点を含めたありのままの自分を認めることを自己受容と呼びます。根拠なく自らの存在価値を認めることです。

機能価値の高低をもとに存在価値が規定されるわけではありません。機能価値の高低に左右され揺らいだままでは、決して自分を勇気づけることはできません。

第六章
存在価値を満たせば、機能価値まで満たされるようになります(逆ではない)。
機能価値と存在価値は違う、自己肯定と自己受容も違います。

自己受容では、「不完全を認める勇気を持て」(アドラー派のソフィー・ラザースフェルトの言葉)です。
自己肯定は、条件付きですが、自己受容は無条件の自己肯定です。

第七章
相手を勇気づけると自分も勇気づけられます。これは、自分で自分を勇気づける以上に大きな勇気づけになります。勇気は循環します。

どれほど喜んで他者を援助し、促し、喜ばせる用意があるかを調べれば、人の共同体感覚を容易にはかることができます(アドラーの言葉)。

第八章
アドラー心理学では、支配も服従も望ましくない行動と考えます。支配は、相手が決めるべき課題に土足で踏む込むことです。服従は、自分で決めるべき課題に相手を土足で踏み込ませ、言い分に従ってしまうことです。

これは、課題の分離ができていない状態ですので、自分の人生を生きることができず、他人の期待に応える人生を生きていくことになります。

第九章
アドラー心理学では、相手の行動を親切と捉えるか攻撃と捉えるかは本人次第と考えます(認知論)。その判断の根本には自己概念、世界像があります。

異なる意見を攻撃と見なしているのは、他者を敵と見なし、自分を劣った存在であると考えている証拠です。

第十章
より大きな共同体の利益を優先します。

第十一章
信頼とは、相手の担保や実績にかかわらず、無条件に相手を信じることです。一方、信用とは、相手の担保や実績という条件をもって信じるかどうかを判断します。

会社という人格で信用システムを淡々と回し、一対一の人間としては信頼システムを回し、その両立が求められます。

第十二章
任せられない上司は部下を信頼できず、自分を信頼できていません。逆に、任せる上司は、部下を信頼し自分を信頼することができます。

任せることは勇気づけそのものであり、共同体感覚の発揮そのものです。つまり、このふたつの交差点に任せるがあります。

(2)感想

アドラーを上司として、企業の人財育成(OJT)をストーリー化しているところが、この本のユニークさだと思いました。

人財育成のストーリーは、アドラー心理学の中核概念である共同体感覚と勇気(車で言えば両輪)を軸にして展開しながら部下の成長する姿が描き出せれていると思います。

本書を読み通して、アドラーはどのようなリーダーシップを発揮していたのかを考えてみたい。

一つ目は、オーセンティックなリーダーシップの発揮だと思います。オーセンティックとは、正直、誠実という意味ですが、アドラーの言葉で言えば、ありのままを自己受容するということだと思います。強みも弱みのすべて自分ですので(全体論の考え方)、真摯に向き合わなければなりません。

二つ目は、問いかけることで部下に気づきを与えるリーダーシップだと思います。指示命令でなく、問いかけることで部下の主体性、自己決定性を高めます。

三つ目は、信頼によるリーダーシップだと思います。著者の言葉で言えば、任せるリーダーシップです。ビジネスの世界では、上司は、一定の期間に成果を出す責任がありますので、部下を無条件に信頼することは、忍耐や覚悟が必要です。

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