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アンラーン

著者 柳川範之 為末 大 

発行 日経BP

   2022年1月20日

柳川模範 東京大学経済学部教授

為末 大 400メートルハードル 日本記録保持者

  

(1)学びの質を高める方法―「アンラーン」とは何か?

アンラーンは、学びの否定ではなく、これまで学んだ知識や身につけた技術を振り返り。さらなる学びや成長につなげる形に整理し直すプロセスです。これまでに身につけた思考のクセを取り除くことです。

アンラーンとは、完成されたスキルや知識をあえて「不完全段階」に戻して可能性を
広げることです。

思考のクセとは、環境に適応してパターン化した意思決定プロセスです。

今の姿を変えることを厭わず、「今までの延長線上での未来図」を捉えるのをやめることで。さらなる成長につなげていきます。

何を残して何を捨てることが未来を活かすことにつながるかを考えます。

アンラーンが必要なのは、「自分のなじんだ狭い世界の環境や常識に染まって行動や思考にパターン化が生じている人」です。

(2)実践 アンラーン―自分を「新しく学べる状態」に整える方法

アンラーンの対象とすべき最大のものは、日常の判断や習慣に大きな影響を与えている、会社や組織におけるしきたりやルールです。

アンラーンをすると、自分の本来の思考や、「今の」自分にとって「ほんとうに」大切なことが見えてきます。アンラーンの目的は、行動を変えることそのものではありません。

小さなアンラーンを実践するための8つの方法
❶「これは、今の会社(環境)じゃなくても通用するだろうか?」と問う
この会社・環境でしか通用しない「カルチャ―対応スキル」に対しては「客観視」できる目を持つべきです。

❷今の仕事に就こうと思った理由を問い直す
「自分の本質に関わる問い」です。自分の「素」の状態=フラットな位置に戻してくれます。

❸専門外・業界外の人と話す
本質的に自分の仕事の意義を確認することにつながります。

❹多様な人、異質な人と接する
「自分にとっての当たり前」と「他人にちっての当たり前」の違いに気づきます。

❺周囲の人に、あなたについて尋ねてみる。自己認識と周囲かたの評価の違い受け入れます。

❻あえて情報量をセーブして動作や仕事を言語化することで「本質」にフォーカスする。

❼副業をする。本業だけに通用する「当たり前」に気づく。

❽「早くなじもう」「それらしくなろう」としない。「いかに違和感をわすれないか」を大事にする。

(3)アンラーンを阻む7つの壁と乗り越え方

アンラーンができている状態とは、「それまでに無造作に身につけた知識や技能を整理し直し、これから新しい知識や技能を身につけていくために、できるだけ余計なものを外してシンプルに整えることができている状態」です。

「知らず知らずのうちにパターン行動をしている」としておくことが重要です。分った上でパターン行動をしているのか、無意識にパターン化に組み込まれているのか、この違いは大きいです。

アンラーンを阻む7つの壁
❶このままでいいんじゃないか ❷今あるものを手放したくない ❸せっかくここまで頑張ってきたのだから 

❹自分のやり方でやりたい、他人には分からない ❺あの人の言うことなら間違いない
❻だって、これが好きなんだもん(好きと慣れていて心地よいとの線引き)
❼誰の中にも潜む様々な「バイアス」

7つの壁を乗り越えるためには、自分の中に「優秀なコーチ」を持つことです。自分自身を他人のように見るクセをつけるということです。自分自身にいい質問を浴びせることです。

変化し続ける強さの源「コア」を知ります。コアとは、自分が自信を持てる部分、自分の土台となる部分で環境が変わってもあまり変化しないものです。

人は「コア」があるからこそ変化に対応できると同時に、自ら変化し続けることができるのです。

アンラーンすることで、自分のコアにあたる揺るぎないスキルとカルチャー対応から生じたクセを切り分けることができるなら、どんな環境変化にも上手く対応することができます。

(4)アンラーンを人生とキャリアの武器にする方法

ある条件下での環境に適応し過ぎると、状況が変わったときにかえって阻害要因になってしまいます。

アンラーンは、改めて自分を見つめ直し、自分に余白をつくり直す機会です。チャンスは余白のある人に訪れます。

アンラーンの隠れた成果というのは、自分自身が「どう生きるべきか」に気が付くことです。
(人生の意味が明確になります)。

「役に立つか立たないか」「必要かそうでないか」などから頭を切り離して世界を眺めると(アンラーンすると)、「面白い」、「楽しい」、「興味がある」ことがたくさん見つかります。

誰もが、とても狭いトンネルの中で、何かのフィルター越しに自分や未来を見ているのに、気づいていないだけです。

変化に気づき、対応するためには、過去の環境対応と距離をとり、いったん自分をニュートラルに戻す時間-アンラーンが必要です。

(5)感想

学び続けることとアンラーン(学びを捨てる)は相反するイメージがあったが、本書を読んで、アンラーンはむしろ必要なことであることが良くわかった。

自分自身に自分の本質に迫る問いかけをすることで、今までに溜まった思考パターンの垢(本書ではクセ)を洗い流して、スッキリしてその余白に新たな自分を楽しみながらつくることができれば(自分企画)、どう生きていくべきか、人生の意味も見えてくるのであろう。

アンラーンを繰り返すことによって、自分のコア(自分が大事にしているもの)が見えてくるという指摘は、本質をついていると思います。なぜなら、変化に対応しなければならない時代だからこそ、変えてはいけない自分のコア(自分軸)をしっかり持つことがますます重要だと思うからです。

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