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プロセスエコノミー

著者 尾原和啓

発行 幻冬舎

2021年7月30日 第1刷発行

フーチャリスト 藤原投資顧問 書生

(1)なぜ、プロセスに価値が出るのか


若い世代の価値観の変化があります。30代以下の乾けない世代は、生まれた時から「ないものはない」時代で育っています。

この世代が重視する「幸せの3要素」は、良好な人間関係、意味合い、没頭です。対照的な乾いてる世代は、達成と快楽です。

物質的なモノよりも内面的なコトに価値を感じています。山口周氏は、この価値観の変化を役に立つから意味があることの方が、価値があると指摘しています。

所属欲求を満たすことを消費活動にも求められています。
消費者は、商品の質だけではなく、その思想やメッセージに共鳴し、商品を買ったり応援をします。消費者もメーカー活動に参加し社会変革に挑戦していきます。ブランドのメッセージに、自分の生き方を重ね合わせています。

コトラーの提言したマーケティング4.0(経験価値志向のマーケティング)の論考は、プロセスエコノミーの重要性を裏付けています。

テクノロジーの進化発展によってアウトプットが限りなく無料に近づき、ユーザーはアウトプットでなくプロセス自体におカネを投じるようになります。このテクノロジーのキーワードは6Dです。

(2)人がプロセスに共感するメカニズム

オバマ大統領を誕生させた「Self Us Now」理論のように、本来隠されていたプロセス(自分の生き様)を開示し、私的なストーリーを他者と共有することによって、多くの人を巻き込み熱狂を生み出します。

人間が新しい変化を起こす時には、ワクワクを共有し、キュンと動く感情脳(システム1:直感的プロセス)にアプローチした方か効果的です。感情脳に訴えるのは、ロジックではなくストーリーでありナラティブです。

プロセスエコノミーを回すエンジンは、「利他の心」です。これは、人間の本質的な欲求とも合致しています。

人間というのは本能的に、他人とプロセスを共有することに幸福を感じ、主義主張を超え、つながることができる生き物なので、プロセスエコノミーは人間本来のメカニズムと非常に相性が良い仕組みです。

(3)プロセスエコノミーをいかに実装するか

正解主義から修正主義(藤原和博)へ転換すべき。修正主義こそ。決まられた正解のない時代の歩き方です。

「effectuation」は、プロセスエコノミーを通じて、何かを達成する際に知っておくべき心構えです。
 
 ❶自分の手の内にある、楽しいこと、幸せだと思うことから始めよう
 ❷最初から許容範囲の中で失敗を許容しよう
 
 ❸パッチワークのように新しいムーブメントを広げよう
 ❹失敗の中に実は成功がある
 ❺失敗に見える中から新しい出合いがあり、予期せぬ成功がある

世の中が激しく変化する時代には、どこに正解があるかわからない中で答えを探す「ジャズ型」の生き方、働き方が向いています。

手持ちの情報をシェアして仲間を作り、プロセスを惜しみなく開示してしまったほうが、結果的にさらなる情報が集まってきて、自分にとって得になります(情報をフルオープンにして旗を立てる)。

プロセスエコノミー的な発想は、モノ作りの方法自体もアップグレードしてくれます。アウトサイド・インからインサイド・アウトに変わります。

(4)プロセスエコノミーの実践方法

プロセスエコノミーを実践するうえで最も大切なのは、あなたの中にある「Why」(なぜやるのか・哲学・こだわり)をさらけ出すことです。

既存の発想を転換し、プロセスを通じて人々と「Why」を共有することに力を注ぐべきです(サイモン・シネック)。

Whyを持っている人への共感が生まれると、まわりにいる人がその人を応援したくなる。これがプロセスエコノミーのおもしろいところです。

ジャングルクルーズ型で挑戦プロセスの目撃者にするか、バーベキュー型でみんなで共にプロセスを作り上げるか、プロセスエコノミーの手法は一つではありません。

(5)プロセスエコノミーの弊害

プロセスで稼げてしまうと本来のWhyを見失ってしまいます。次第に、虚構の自分を作り出してしまうので注意が必要です。

プロセスエコノミーの中で観客の期待に応えることが目的になってしまうと、いつに間にか観客が主体となり、自分の人生のハンドルを握られた状態に陥ってしまいます。

(6)プロセスエコノミーは私たちをどう変えるか

プロセスエコノミーの時代には、EX(エンターテインメントトランスフォーメーション)という考え方が大切です。人はワクワクする生き物だから、あらゆるプロセスに楽しさを実装することでより可能性が広がっていくのではないかという発想です。

プロセスに夢中になる3条件あると言います(仲山楽天大学学長)。まず、得意(強み)であること。そして、その得意がやっているだけで楽しいこと(プロセス目的的)。最後にそれが誰かの役にたつもの(利他的価値)であるということです。

目標に向かって直線的に効率よく進むのではなく、内面から湧き出る「何か」に突き動かされ、人生を楽しみながら境界線の区別なく楽しげに歩き回る。これは、最先端の働き方と言えるでしょう(唐川靖弘氏)。

過程目的的なプロセスエコノミーの生き方は、人生の歩み方がジグソーパズル型からレゴ型に変わったということです。

(7)感想

私は、乾いた世代で生きてきましたので、プロセスエコノミーがいずれ当たり前になる時代が到来すれば、いままでの価値観や行動様式のリセットを求められます。著者の先の時代を見据える洞察力には度肝を抜かれました。

テクノロジーの進化であらゆるものは6Dになることやプロセスエコノミーは、人間の本質的な欲求を満たすことは、プロセスエコノミーを裏付ける説得力があると思います。

ビジネスがより人間味を帯びてくるのではないだろうか。より人間臭くなることがAIに支配されない行動様式になると思います。
モノの性能、機能ではなく、経験などのコトの意味や価値が重要になりますので、自己のこだわり、哲学を物語として開示する勇気が必要になります。

プロセスエコノミーの時代のキャリアデザインは、自分のあり方(Being)を軸に描いていかなければならないと思います。私は、これをビーキャリと呼んでいます。

あり方(Being)として、変えずに大切にすることと変えることの選択眼(洞察力)が求められます。

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