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モチベーション革命

著者 尾原和啓

発行 幻冬舎

2019年9月 第9刷発行

IT批評家 藤原投資顧問シニアアドバイザー

(1)「乾けない世代」とは何か?

今の30代以下は、団塊世代以上とは、全く異なる価値観(モチベーション)を持っています。
団塊の世代以上は、ないものをいかに埋めるかが、最大のモチベーションです。この世代を「乾ける世代」と呼びます。

今の30代以下は、生まれたころから既に何もかもが揃っていたので、何かが欲しいと乾けい。この世代を「乾けない世代」と呼びます。「ないものを勝ち得るために我慢する」という上の世代の心理は理解できません。

幸せの五つの軸(セリングマン)から見ると、乾ける世代は、「達成」と「快楽」を追求する世代です。

乾けない世代は、「良好な人間関係」、「意味合い」、「没頭」を重視します。今の仕事に意味合いも見出せていて、人間関係もいたって良好、好きな仕事に没頭できている状態です。

「これをやれば成功する」という黄金律が無い時代だからこそ、自分にだけにしかできないことを突き詰め、楽しみをお金に換えていくことができる乾けない世代が強いのです。

(2)偏愛こそが人間の価値になる

好きなことをやり続けることこそが最大の競争力となります。

顧客の潜在的な欲求を見つけ出して、体験をプロデュ―スしていくのがこれからの仕事です。

既にあらゆる課題解決がなされており、より新しい切り口(インサイト)や物の見方を変えることが必要とされています。

インサイトが重要視され、仕事と遊びの境目があやふやとなった今では、なるべく仕事は「公私混同」で取り組んだ方が効果的です。

ワークの中のライフワークにおける部分をいかに広げていくかが大事です。ワークライフバランスの時代からライフワークバランスの時代になります。

これからの仕事で大切なのは、自分にとって得意なことで、いかに相手にとって「有ることが難しい」を探し当て続けるか、ということです。

「“労力の割に周りが認めてくれること”が、きっとあなたに向いていること、それが”自分
の強み“を見つけるわかりやすい方法だ」(任天堂の故岩田聡元社長の名言)

これからは、偏愛とも言える嗜好性を、個人がどれだけ大事に育て、それをビジネスに変えていけるかが資本になっていきます。この偏愛を突き詰めることが、生き残りをかけた分水嶺になります。

変化を生き抜く3つの選択肢
❶ただひたすらに好きなことをやっていく道
❷伝統職のなかで、コツコツと働く生き方
❸永遠のフリーターを楽しむ生き方
➡「変化をチャンスと捉え、最先端を走る生き方」にシフトしなければなりません。

(3)異なる「強み」を掛け算する最強チームの作り方

ストレングス・ファインダーで自分の強みを把握します。これを、ベースに「自分と違う強みコレクション」ゲームをチームで行います。自分の弱みを補完してくれる相手が見つかります。

偏愛マップを作成してチームで見せ合います。自分の好きなことを聞いてくれた相手には、親近感を抱き、心を開けるようになります。

自分のトリセツ(取扱い説明書)を書きます
❶この会社に入ろうと思った動機につながる、最も古い記憶について
❷自分が120%頑張っちゃうこと、ときは?
❸「これだけはダメ、嫌」自分の取り扱い注意ポイントについて

最高のチームになる鍵は、それぞれの強みや好きなことを理解し、一人ひとりの違いを認め合うことです。

「価値とは、差異×理解」です(羽根拓也氏)。人との違いも、相手に理解されなければ価値を発揮しません。

変化のスピードには、信頼でしか追いつけません。信頼とは、相手を信頼して任せることです。

日本人は、集団主義的な「安心社会」を構築して強みを発揮してきましたが、信頼する技法を知りません。

信頼社会とは、「私にはこれができない。だからあなたに任せます。その代わり、私は自分の得意な作業は頑張ります」と言い切り、お互いを信じて頼り切る社会です。

(4)個人の働き方

著者の働き方や生き方を通して、変化の時代における新しい働き方のヒントを下記のように提言しています。

❶月の勤務時間は270時間。その内、170時間は、本当に好きなことだけをしている時間である。着想と縁つなぎをライフワークとして楽しんでいる。
❷ご縁(人に人を紹介し、つなぐこと)は、お金に換えない。なぜなら、お金をもらうと純粋に楽しい気持ちにノイズがはいるから。

❸強みを磨き続け、自分にしかできないことを仕事にする。
❹働きながら非日常のなかにいる状態を意識的に作っている。永遠に非日常の中でオン状態である。

❺生きがいのために働くことは(ライフワークバランス)、本人にとって遊んでいるようなものである。
❻やりたくない仕事を続けるくらいならば、いっそ引きこもって“自分の好き”と向き合った方が良い。

❼「好き」を旗印して仲間を増やします。
❽「他人に迷惑をかけてはいけません」という現代の呪いをといていきましょう。

❾好きなことに打ち込む熱量は、見ている人を元気にします。AIやロボットによって作業が効率化されるなかで、人に残された大事な役割です。
❿変化する時代を自立して生きていくためには依存先を複数持つことです(「自立とは、依存先を増やすこと」(熊谷晋一郎:医師))。

⓫すでに存在するモノに対する「意味のイノベーション」が大切になります。自分だけにしかない「WHY」が時代を作ります。
⓬世の中の人にとって「新しい意味」をもたらすものは、人との違いや、ズレから生じる「好き」や「歪み」です。

(5)感想

「乾けない世代」と「乾ける世代」のモチベーションの源が違うことをお互いに受容し、差異を理解することで、世代差によって生じるコミュニケーションギャップは解消されると思います。

著者は、セリングマンの幸福の5つの軸をベースに、「乾けない世代」と「乾ける世代」のモチベーションの源の違いをモチベーション革命と称していますが、一見わかりやすいですが、誤解を生みやすい面もあると思います。

なぜなら、幸福の5つの軸の強弱の濃淡はあるとしても、5つに軸がバランスよく(関連付けて)持っていることが幸福につながると考えるからです。

乾ける世代も、達成や快楽を軸足しながら、目の前の仕事や正解のある問題を解くことに意味(価値)を感じ、同じ釜の飯を食べる組織の中で没頭した結果、日本は高度成長という果実を得ることができました。このように、5つの軸は関連付けることができます。

乾けない世代は、正解がない時代を生き抜かなければならないので、どのようなことに達成と快楽を求めるか自分の人生の意味づけが必要になります。働きがいと生きがいを統合していくことが求められると思います。

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