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リフレクション 内省の技術

著者 熊平 美香

発行 ディスカヴァ―・トゥエンティワン

2021年3月20日 第1刷

昭和女子大学キャリアカレッジ 学長

一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事

(1)リフレクション 基本の5メソッド

認知の4点セット(意見/経験/感情/価値観)の目的は、メタ認力を高めることです。
認知とは、外界にある対象を知覚し、それが何なのかを判断することです。

認知(知覚+判断)は、過去の経験により形成されたものの見方を通して行われるという法則があります(推論のはしご)。

認知の4点セットを土台にしたリフレクションの基本となる5つのメソッドがあります。
❶自分を知る
動機の源を知って自分の軸をつくります。
無意識に心が感じ取っている動機の源は、価値観として現れます。
ネガティブな感情を振り返る方が、自分が大切にしている価値観を見出しやすいです。

❷ビジョンを形成する
心の中にあるビジョンの種を、本物のビジョンに変換します。
動機の源につながるビジョンを持つと困難に打ち勝つエネルギー(クリエイティブテンション)が生じます。

目的やビジョンを自分ごと化します。
会社のビジョンと個人のビジョンをつなげます。

❸経験から学ぶ
リフレクションと反省を区別します。過去を振り返る行為は同じですが、振り返る目的は違います。
過去を反省するのではなく、リフレクションで経験を知恵に変えます。

リフレクションの目的は、経験からの学びを未来に活かすことです。
経験から普遍的な法則を見出し、持論をアップデートします。

❹多様な世界から学ぶ
対話とは、自己をリフレクションし、評価判断を保留にして、他者と共感する聴き方と話し方です。私たちの学びを支える土台となる力です。

対話では、一人のものの見方ではなく、多様な視点を取り入れるほうが、意見がより洗練されます。

他者の意見を聴くときには、自分の解釈を加えず(保留)、相手の認知の4点セットを聞き取り共感します。

リフレクションと対話の2つを実践することで、自分の境界線の外にある学びを、自分のものにすることが可能になります。
対話を通して、多様な世界から学び、自分の世界を広げます。

❺アンラーンする
アンラーンとは、過去の学び(成功体験)を手放すことです。
何かに行き詰まったら、アンラーンするタイミングだと捉えます。
現状の延長線に明るい未来がないことに気づくことです。

(2)リーダーシップ編~オーセンティックなリーダーになる~

オーセンティックとは、自分に限りなく正直という意味です。
オーセンティック・リーダーシップとは、自分らしさを体現したリーダーシップです。

メンバー全員が自分の強みを活かしてリーダーシップを発揮できるチームをつくります。
自分を知り、ブレない軸を持つオーセンティンクなリーダーになります。

モチベーションが下がったら、自分の原点に戻るリフレクションで初心に帰ります。それでもモチベーションが上がらなければ、すべてから解放された自分を想像して、自分にとって本当に大切なこと、残したいものは何かを見定めます。

経験をリフレクションして、グロースマインドセットを育てる。
意見だけを変えるのではなく、経験や価値観を置き換えることで意見が変わるという視点を持つことで、思考の柔軟性が磨かれます。

驚きや違和感のリフレクションをアクションに活かす。
相手の考えや感情にも、それなりの理由があるという認識に立つこと、これが共感です。

意見の違いに焦点を当てるのではなく、その意見の背景にある経験と価値観に注目し、対話の目的についての合意形成を目指します。

(3)育成編~自律型学習者を育てる~

リフレクションと対話を繰り返して、育成力を磨きます。
自らが定めた目的に向かって行動できる部下を育てます。

なぜそう考えるのか自問する習慣を促進し、部下のメタ認知と深い思考力を育みます。
期待値を一致させるために、成功の評価軸を最初に決めます。

無意識の偏見は人間関係の阻害要因になるので、2度のリフレクションで自分の偏見をメタ認知します。

得意なことは自分では気づきづらいので、強みを活かし貢献している様子を伝え、部下が自分の強みを客観視できるようサポートします。

フィードバックは、相手の行動、その結果、理想の行動の3点セットで伝えます。
フィードバックを伝えたあとに、対話を通して、部下にリフレクションを支援します。

指導に当たっても結果が出ない時には、相手の課題に焦点を当てるだけでなく、自分の選択した指導方法と、その前提にある内面を振り返る。

(4)チーム編~コラボレーションする~

パーパスとは、組織の存在理由です。
パーパスを探求する究極の問いかけ
⇒あなたの組織がこの地球から消えてしまったら、この世界は何を失いますか?

パーパスは定義することがゴールではありません。メンバー一人ひとりの心の中に存在することで(パーパスを自分ごと化)、本来の役割を果たすことができます。

理念、行動、態度、思考、感情の五つの一貫性が、組織文化をつくる。
異質な世界に飛び込み、自分の当たり前に気づき、新しいものの見方を手に入れる経験を楽しむ。

「ねばならない」と受け入れることは、ビジョンの自分ごと化とは言えません。
多様性に優劣の概念を持ち込まず、学び合うことができるフラットでオープンな環境を作る。

(5)感想

リフレクション(内省)とは、自分と向き合って、自分の内なる声を素直に聞いてみるというのが私の定義です。本書で提言している認知の4点セット(経験、感情、価値観、意見)でメタ認知力を高めることで、リフレクションをより実践的にできると思います。

特に、経験によって生じた感情は重要だと思います。なぜなら、人間の脳は、強く感情を揺さぶられた経験は、長期記憶として保管されるからです。

したがって、感情と強く結びついた価値観(ものの見方)をアンラーンすることは難しいかもしれませんが、メタ認知能力を高めて乗り越えていくことで成長につながると思います。

内省と対話を繰り返すことで、他者の力を借りることも忘れてはいけません。その時には、その組織に心理的安全性があれば、より有効的な方法となります。

メタ認知能力を高めたリフレクションと対話をすることで、個人と組織の成長を導いて、学習する組織、ティール組織に変革できると思います。

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