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体験の哲学

著者 飲茶

発行 ポプラ社

2021年6月14日 第1刷発行

哲学作家、経営者、漫画原作者

(1)体験の哲学

・哲学とは、「役に立つ/役に立たない」といった次元で考えるものではなく、「役に立つとは何か?」という根本を問い直すものです。
・体験の哲学は、名が示す通り「実践的」なもの、つまり、実行(体験)して初めてわかる哲学です。

・「何をどう選ぼうが幸福になれる哲学」、即座に今のこの瞬間に幸福になれるような哲学が、最強の哲学ではないでしょうか。
・漫然と日常を生きるな。何を前にし、何をしているかを意識しろ。

・人生とは体験の束です。⇒ヒューム 「私とは知覚の束である」
・体験の質を向上させれば、人生の質も向上します。
・普段見過ごされている日常的な体験に目を向け、その体験を意識して味わって生きよ。

(2)体験の効能

・体験のチェックリストの効能は、「世の中には、未体験のものがたくさんあることに気づくこと」です。⇒アリストテレス 「無知の知」
・人間は、実際には経験していないのに、それを知っていると思い込みがちです。
⇒ベーコン 「(体験に基づく)知は力なり」

・何かを身に着けるとその身に着けたものが持つ「イメージ(固定観念)」に応じた振る舞いを無意識にしてしまいます(構造主義)。
・自己イメージは、ファッションによっていくらでも取り替えのきくものであり、そもそも存在しないのだ、という体感的理解を得ることが大切です。

・知識が価値を失い、体験の時代が訪れました。体験には、唯一性という価値があります。
・お互いの体験に価値を感じられる人間関係の構築することが、充実した人生を送りための方法論になっていきます。

・意外と他人は、自分とは違う経験をしており、自分とは違うことに関心があります。この溝を埋めるツールとして体験のチェックリストが役に立ちます。
・未体験の記録により継続性が生まれます(継続は力なり)。

(3)体験するための作法

・「厳かに体験すること」が体験哲学に求められる姿勢です。
⇒(何気ない日常であろうと)その体験を意識して深く味わうことです。
・「うすぼんやりとなんとなく体験したこと」は体験ではありません。

・体験しないというのも一つの体験であり個性です。
・体験の色分けも個性の把握になります。

・自覚的に体験を味わって細かい違いがわかる人は、言葉(概念)の引き出しが多いです。
・言語とは(身体的な)体験に由来するものです。

・体験している最中には「言語化」にこだわる必要はありません。
・西田哲学では、まず、経験が存在し、その後「判断によって私と世界が生み出される」と考えます。
⇒「個人があって経験があるのではなく、経験があって個人がある」
⇒個人と世界が生み出せれる前つまり、「主客未分の生の経験」のことを「純粋経験」と呼びます。「純粋経験とは、まだ判断が加えられていない生の経験」のことです。
⇒純粋経験こそが「真の存在」であり、同時に「真の自己」です。

・体験の哲学の体験は、この純粋経験を目指す境地です。
・体験そのものを目的として無心で味わうとき、純粋経験が訪れて、哲学が定義する幸福という状態が訪れます。
・純粋経験を目的とするならば、比較や言語化は必要ありません。

(4)感想

・巻末の「体験のチェックリスト」を見て、愕然としました。人生経験は長い方ですが、如何に自分の狭い既知の世界で生きてきてしまったと猛省しています。思い込みや知ったかぶりが人間の可能性に蓋をしてしまうと思います。

・体験の哲学を実践する方法は「体験のチェックリスト」を活用することですが、その背景(土台)に、西田哲学の純粋経験やメルロ=ポンティの身体性の哲学や禅の思想などがあります。体験を意識して味わうという奥の深さ、重みを感じました。

・単に物事を知って知識を増やすのではなく、体験に基づいて知識を知恵に変えることが重要だと思います。知恵を他者にストリーテリングすることが、真のコミュニケーションのあり方ではないかと思います。

・拙著では、良質な経験による経験学習を実践することで、人間力を磨くことを述べましたが、経験(体験)にどう向き合うかということが改めてよくわかりました。

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