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幸せな自信の育て方

著者 シャルル・ぺパン 

訳 児島修

発行 ダイヤモンド社

2022年7月26日 第1版発行

哲学者、作家

(0)人はどのように「自信」を獲得するか

自信には、「他者への信頼」、「自分の能力への自信」、「人生全体への肯定感」の三つの原動力がある。

自分の力で道を切り拓かなければならない現代人には、自信を持つことがとても重要である。

生まれつき自信がある人はいない。人は、自信を獲得するにだ。自信は「育てる」もの。
自信は、私たちの存在の中心にある。

(1)「強い絆」を育む―人間関係から自信を得る

自信は、まず他者から生まれる。自信とは、他者からの贈り物である。自信は、関係性から生まれる。自信は、他者との絆があってはじめて育まれる。

他者との信頼関係は、自信を持つための大きな基盤である。愛情と友情は、自信の大きな源である。
アリストテレスによれば、友人とは、「自分の能力を発揮するのを助けてくれる人」である。

(2)「能力を高める―技能を磨いて自信を培う

自信とは、不安にあるにもかかわらず、リスクを取って複雑な世界に飛び込もうとする能力である。

一つの分野を極めれば、人生全般への自信に高まる。技能を磨くことは、自分を知ることでもある。そこに、技能以上の価値が生まれる。

自信は能力が高まると共に育まれる。自信は生得的なものではなく、その大半は後天的なものである。

自信とは、何かを成し遂げたことへの自信である。本当の自信とは、自分の中の不確かな部分に目を向けて、それを呼び覚まそうとすることから得られる。

(3)「自分の心の声」に耳を傾ける―直感を信じる

混沌とした現実世界で自信を保つには、内なる声に耳を澄ますことが必要である。

直感を信じ、心の声に耳を傾ける方法を学ぶことは、自由につながっている。

自由は制約と何の関係もない。私たちが自由でいられるのは、完全に自分自身であるとき、現在という瞬間に過去のあらゆる経験と共にあるときだ。

雑音に負けずに内なる声に耳を澄ますには、「儀式(自分自信との約束のようなもの)」の力を借りることが効果的である。

(4)「感動」を体験する―「美しさ」の力で自信を深める

美しいものに感動したとき、私たちは自分の判断に十分な自信を持っているので、それを裏付ける何かを必要としない。何らかの基準に頼ることなく、自分の意思で自由に判断する。

美しさに感動することは、私たちを目覚めさせ、刺激し、自信を深めさせる。美に心を開いているとき、人は、感覚や知性、無意識、想像力など、あらゆる側面を調和させながら、その美しさに反応している。

美しさに触れ、自然と一体となることで、それまで縛られていた想念から解放され、自分を客観的に見られるようになる。

私たちが美しさから得る自信は、自然の中で振動し美を作り出している力への信頼でもある。

(5)「決断」する―「自分の意思で決めること」で自信が生まれる

「選択」と「決断」は違う。選択は合理的に答えを導くこと。決断は客観的な判断材料がない状態で、自分の意思でどちらかを選ぶこと。決断のdecideの語源は、ラテン語の切り落とす(decidere)に由来している。

すなわち、選択とは行動する前に知ることであり、決断とは知る前に行動することである。
決断とは、快適なゾーンから出ること。

不確実性を受け入れることで、人は自由になれるし、自信が持てるようになる。

小さな決断をするたびに、「自分の自由を信頼する」ことを少しずつ学んでいける。
小さな決断を積み重ね、失敗から学ぶことで、自信は育まれていく。

(6)「手」を動かす―行動で自信を育む

手を動かして何かをつくることによって、私たちは自分らしくいられるし、自信を保てるのである。
人間の本質は、「ホモ・サピエンス(知る人)」というよりも「ホモ・ファベル(つくる人)」に近い(アンリ・ベルクソン)。

(7)「行動」する―世界と接することで自信を得る

行動し、現実世界とぶつかることで自信が生まれる。ただし、「自分ですべてコントロールできる」と思ってはならない。「行動が起こす変化」を信じる。

真の行動とは、十分な自信がない状態の自分と、予測できない世界とぶつかり合うことである。行動する秘訣は、まずとにかく始めること(アラン)。

私たちは「ある」のではなく、常に何かに「なる」過程にある。「自分は何かになれる」ことに自信を持てばよい。

集団に参加することで自信を取り戻す。行動することは「私」の外側にでること。

(8)「憧れの人」を持つ―自信と模範

「誰かに憧れること」が人生を豊かにする。憧れは、自分の道を切り拓く勇気を持った人たちを手本にして、自分を成長させ、自分の殻から抜け出し、自分自身の道を切り拓こうとすることである。

冷ややかな態度をあらため、目標とする人の生き方を情熱を持って追いかけることが、自信をつくる。

(9)「自分の望み」に忠実になる―自信の危機に対する解毒剤

他人と自分を比べることは、自信にとっての毒になる。他人と比較すると、「人にはそれぞれ、かけがいのない個性がある」という真実が見えにくくなる。

自分の本当の望みがわかれば、他人と自分を比べる必要はなくなる。

自分自身に忠実にならなければ、本当の自信を持つことはできない。心の欲求に従い、大きな喜びを得ていない限り、本当の自信は得られない。自分自身になれ(ニーチェ)。

(10)「人生」を信じる―生きることに自信を持つ

自信が存在するために必要な媒体であり、自信を育むために必要な土俵は、人生への自信である。

人生に「ユーザーマニュアル」はない。だからこそ、私たちは自由であり、自分の存在の意味を自力で見つけ出すことができる。

自信の本質とは、どんなことがあっても自信を持つこと。私たちがもっとも自信を示す必要があるのは、人生が脅かされているときである。

極限の状況でも自信を保ち続けた人の生き方は、私たちに勇気を与えてくれる。

(11)感想

フランスの高校生が熱狂する「自分を好きになる」授業と表紙に書いてあったのに惹かれた。また、自信の育て方を高校の授業で教えているとは驚きを感じました。

日本の教育は知識編重型なので、本書のようなより良く生きるための人格(人間の器)を育てる教育が必要だと思います。

自信というのは、結果的に自信を獲得するものであり、自信そのものを意識することは少ないのではないだろうか。

自信を育てる10のキーワードの中で、『「感動」を体験する―「美しさ」の力で自信を深める』には、目から鱗が落ちた。ビジネスリーダーは、美意識を鍛えるべきと言われますが、先か見えないVUCAの時代(正解のない時代)には、最後は、自分を信頼できる自信しか残らないのではないか思います。

人が生きる上での究極の理想の状態(人生の究極的価値)として、「真・善・美」があるが、確かに、真・善には判断基準が必要ですが、美には必要がありません。

美しいと断定できるのは、反論の余地のない根拠あるからではなく、自分の心の声に耳を傾けて、美に心を解放して、自分を信頼することができているからです。

脳科学的に言えば、知覚・思考・感情の領域ではなく、気づき脳が活性化しているのではないだろうか。

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