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森のような経営

著者 山藤賢×山田博

発行 (株)ワニブックス

2021年11月10日 初版発行

山藤賢 昭和育英会理事長

山田博 (株)森へ創業者。プロ・コーチ。

(1)経営とは何かを語る

組織の文化風土は、入った時の気配に表れます。
場の気配によって、そこにいる人の振る舞いは自然と変わります。

経営と文化を分離しない、そうでないと上手くいかない時代です。

森にはピラミッド構造もトップダウンの指示系統もないが、調和を
取りながら豊かに持続しています。ティール組織と森は似ています。

森という組織は、僕らのずっと先を行っているのかもしれない。

従業員の自由を決めるのは、組織のあり方と規律です。
全体性を見ることは、物事や組織、人のあり方を「ヨコから見ている」感覚です。

(2)森が教えてくれること

森に入った人が、ほぼ必ず発する言葉は、「大丈夫」と「安心」の二つです。
個人の大丈夫は「自分は自分のままでいいんだ」、経営の大丈夫は「今が大丈夫だから、先も大丈夫」。

「今が大丈夫」という感覚は、自然の摂理と似ています。人間以外の生き物たちはみんな「今この瞬間にできる最善のこと」だけをして、その結果はすべて受け入れられています。

将来を予測し、コントロールして人生を設計しようとするのは人間だけ。自然界全体からみると不自然なことです。

希望や夢はいいが、「目標通りにはならなくてはいけない」と思い込むと悲劇が起こります。
目標や数値達成が目的になると、実態を見ることが疎かになりかねません。

平等ではないからこそ、公正(フェア=真っ当)であることが大切です。
人間の営みのまわりには、常に人間には理解に及ばない自然界の営みがあります。

何があっても「自分は大丈夫だ」と思える健やかさこそが、これからの強さです。

(3)森のような経営

単なる偶然としがちなことを「サイン」と受け取ることで、感じるセンサが鋭くなります。

「ヨコから見ている」経営とは、出来事に良い/悪いのジャッジをせずに、「これは何だろう?」と問いかけ、サインのようなものを感じることです(目の前の状態にとらわれない状態)。

コントロールしようという意識に囚われず、「それは、それだね」というふうに見ます。

森に深く触れたことで、「喜びを分かち合える喜び」という感覚が身についたのではないか。
人間の言葉には森で得られる感覚を言い表す言葉がありません。それでも「美しい」といってみたくなります。

経営においても「美しい」という感覚がすごく大事だと思います。売上とかの数字の指標とは別物で、これからの経営において一番大事な指標ではないか。

良い経営、良い意識は、誰が見ても「美しい」のではないか。
気配を感じる基本は、「ゆっくり、静かに、感じる」です。

理念やクレドは、リーダーの佇まいを通じて伝播します。

森でも組織でも、それぞれの人がありのままでいられる、それぞれの居場所があります。
誰かがありのままでいると、回りの人は安心します。

森の特徴はエゴが一切ないように見えるところです。

生き方と働き方と経営の話は一体になっています。すべては生きていくための営みだから「生きている喜び」を原点に経営をしたい。

(4)自分の中に森を育てる

大切なのは森の中にいるような感覚を日常的に持つこと(自分の中に森を育むこと)。それができるなら、必ずしも森に行く必要はありません。

経営者が「森のような人」であれば、そこは森のように安心できる場になります。
究極の「森のような人」とは、ウソがなく、ありのままが素晴らしい人です。ありのままだから信頼も生まれます。

ありのままであるという純粋さが、美しさの本質、源泉です。感性を磨けば(審美眼)、美しさは感じとれます。
ありのままからスタートします。「森のような人」はその一つの道標です。
仕事の価値を考える時の基準を「正しさ」「美しさ」「楽しさ」の3つです。

ありのままになるのを怖がってしまう元凶である「分断」は錯覚に過ぎません。誰もがつながっていると確信することができたら、全員ありのままになるでしょう。

分断は錯覚と自覚して、ありのままの自分を磨く、自然にゆだねる、目的を共鳴させます。

(5)感想

山形の会社に出向していた時に、森のリトリートをしていましたので、その時の何とも言葉では表現できない感覚を自覚しましたので、書名をみて閃くものを感じました。

森の中にある自然の命とつながっている感覚が目覚める喜びです。おそらく、日々の仕事の中で、外からの圧力(ストレスや不安など)で枯渇してしまった感性が蘇ったのではないでしょうか。

自然という大いなる何ものかに、私が生かされているような感覚とも言えます。その時は、生きている喜びや感謝の気持ちで心が満タンになります。

森のリトリートで、森から学んだことを大切にして経営をしてる山藤氏の話は、人や組織のあり方が問われている時代のお手本となるのではないかと思います。

本書の一番のキーワードは、「ありのままの自分でいること」だと思います。「ありのまま」を他の言葉で言い換えれば、自己受容だと思います。

自己受容とは、自分の長所も短所もすべてを受け入れることです。不完全である自分を許すことです。自分をさらけ出す勇気も必要になります。このような人が、まさしく森のような人だと言えると思います。

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