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無意識と対話する方法

著者 前野隆司x保井俊之

発行 2017年2月10日

(株)ワニ・プラス

前野隆司 慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授

保井俊之  慶應義塾大学大学院システム・マネジメント研究科特別招聘教授

(1)ダイアローグのルーツ

近代合理主義、要素還元主義、進歩主義的世界観では解決できない問題に対処する方法として、対話(ダイアローグ)が注目を集めています。

一見「負けた」ように見える論理や古い文化も完全に消滅することはなく、「感じ」「懐かしさ」として文化の古層に生き続けています。この古層に、意見・正義・文化の衝突を防ぐための知恵が埋まっています。

(2)ダイアローグとはなにか

対話に必要な4つの行動
❶聞く
❷大事にする
❸保留する
❹出す

判断を保留する手法は、滅ぼさずに古層に潜らせることと同じなので、ダイアローグを「古層に潜る」とイメージ表現しています。

二つの対話のカタチ(ウィリアム・アイザックス)
❶リフレクティブ(内省的)ダイアローグ
➡主張や論理を離れ、自分自身の無意識と対話
 自分の心の内面に気づきをもたらすような対話
❷ジェネレーティブ(生成的)ダイアローグ
➡参加者全員が個人としての思考を離れ、ジャズの即興演奏のような協創する対話
 集合的フローとも呼べる状態

(3)日本はもともとダイアローグ的な国だった

日本は文化のクロスロードとして、多様な文化の衝突、選択的受容を繰り返してきた歴史があります。

「はっきり主張しない」「白黒つけずに保留する」のは、多様な論理の共存を可能にするダイアローグ的な知恵です。

日本は勝ち負けをはっきりさせず、保留しながら、対話を通じてゆっくり調和させていこうという文化を発達させてきたのではないか。l

日本人は、従来の論理で説明しきれない曖昧なモノを捉えようとする「古層の論理」になじんでいるのではないか。

(4)ダイアローグがつくる幸福な未来

「古層に潜る」とは、森に中にいるイメージで、自分を取り繕わなくても良い場所行くことで、自分をリトリーブ(retrieve:取り戻す)しにいくイメージです。

ダイアローグを通じて、リフレクティブにいったん自分の心のなかに戻り「自分がやりたかったか」を確認し、それを取り戻すことが、自分のバネになるという「自己実現と成長」(やってみよう!第一因子)につながります。

さらに、同じような目的を持つ人たちによる集団での対話が「つながりと感謝」(ありがとう!第二因子)を満たし幸福度を上げます。
ダイアローグを「無意識のなかに自然と入っていける能力」と定義できます。

フローは、幸福の4因子がすべて揃っていて、無意識の中からやりたいことや意欲が湧き出てくる状態です。自分とのダイアローグが出来ていて、かつ幸福度も高まった状態とも言えます。

どのように、「自分の本当にやりたいこと」を見つけることができるのか。人間は、関係性の動物なので、ゴチャゴチャになった関係性の網を抜け出ないとわかりません。

自然に流されるままに活動しているうちに、ふっと見つかったりするのではないでしょうか。

ダイアローグを通じて無意識にアプローチすることは「古層と表層を行き来する窓(リトリートの窓)」をつくることです。それによって、従来の論理では表現できなかったモノ(美や感情など)を論じることができるのではないでしょうか。

現在の社会(表層)を幸せにすることは、未来の古層を豊かにすることでもあります。

より豊かな生き方や働き方を追求していくうえで、ダイアローグは非常に有効です。

(5)感想

対話は、会社(組織)や社員(個)を幸せにする基本的な所作だと思います。なぜなら、対話によって組織の「関係の質」が変わるからです。
現在の「関係の質」を変える時のキーワードは、ダイバシティ&イングルージョンです。この「関係の質」を変えることが組織の成功を導きます(ダニエル・キムの組織成功循環モデル)。

まず、社員(個)は、リフレクティブ(内省的)ダイアローグを行うことで、自分のやりたいことを無意識の中から掘り起こします。

次に、ジェネレーティブ(生成的)ダイアローグで、社員(個)が、フロー状態になり、それが社員同士で共鳴し合います(集合的なフロー状態)。これは、組織全体が協創の場(創発の場)になります。

これは、対話によって「関係性の変化」を狙った組織開発のアプローチです(対話型組織開発)。

対話によって、社員エンゲージメントを高め幸福度が上がり、組織は成果を出し続けてイノベーティブな組織になります。


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