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70歳が老化の分かれ道

著者 和田秀樹

発行  詩想社

2021年6月9日 初版

精神科医

(1)健康長寿のカギは「70代」にある

70代の10年間は、ある意味、中高年の延長で生活できる期間、人生における最後の活動期といっていい。

若返るのではなく、医学の進歩によって、「死なない」から超長寿になるというのが「人生100年時代」の実像です。

延長した老いの期間をどう生きるかが重要な課題です。老いのあり方を左右するのが、人生終盤の活動期である70代になります(人生100年時代のターニングポイント)。

老いを2つに時期に分けて考えます。70代の「老いと闘う時期」と80代以降の「老いを受け入れる時期」です。

超長寿化社会は、いまよりも多様性に満ちた社会になるはずです。高齢者の方が、身体能力や脳機能において、個人差が格段に広がっていくからです。

脳機能、運動機能の維持には、「使い続ける」ことが重要です。そのためには、70代において、いかに意欲の低下を防ぐことにかかっています。意欲の低下は、脳の前頭葉の老化と男性ホルモンの減少が主な原因となって引き起こされます。

70代にとっては、脳機能、運動機能を使い続ける「習慣づくり」が大切になります。個の習慣は、80代でも続きます。

(2)老いを遅らせる70代の生活

引退などと考えず、いつまでも現役の市民であろうとすることが、老化を遅らせて、長い晩年を元気に過ごす秘訣です。

運転免許は返納してはいけません(老化を加速させる)。

肉を食べる習慣が老いを遠ざけます。70歳以上の日本人の5人に1人が、たんぱく質不足です。肉をとることで、セロトニンの生成が促進され、意欲低下の防止に働くのです。

適度な日光浴をする習慣も、意欲低下を防ぐには効果的です。
脳の老化を防ぐのは、変化のある生活をすることがいちばんです。

前頭葉の老化を防ぐためには、「アウトプット型」の勉強スタイルに意識して変えていくことも効果的です。

得た知識を、これまでの経験や他の知識を使って加工し、自分の考えとして述べる時に前頭葉は活性化されるのです(物知りな人より話の面白い人を目指す)。

無理のない運動を定期的に、継続的に行うことが大切です。激しい運動は身体を酸化させて、老化を速めてしまう。

転倒リスクを減らします(薬の見直し、手すりの設置等)。

長生きしたければ、ダイエットをしてはいけない、一気に老け込むリスクとなります。BMIが25~30くらいの少々ぽっちゃりした人が、一番長寿であるという結果が出ています。

食べたいものを我慢する生活は、免疫機能を低下させて、がんになるリスクは高まります。美味しものを食べるとき、前頭葉は活性化します。

70歳を過ぎたら、好きな人、気の合う人とつき合いましょう。

(3)70代の医療とのつき合い方

日米両国の疾病構造の違いがあるにもかかわらず、日本は、血圧と血糖値を下げて心血管障害を減らすというアメリカの医療原則をそのまま運用しているのが現実です(要注意)。

70代になったら、これらの薬の服用にこだわりすぎず、生活の質を落とさないよう柔軟に対応した方が良いです。

健診を受けて無駄な節制をするよりも、70代になったら心臓ドック、脳ドックを勧めます。

日本の医師は、長生きの専門家ではなく、自分が担当する臓器のスペシャリストにしかすぎない。

70代になったら、医師の言うことをあまり鵜呑みにしてはいけません。医師に何か言われても、ただうなずくのではなく、自分で考える習慣をつけましょう。

医師に長生きのための知恵を求めるより、あなたの身の回りにいる実際に長寿な人の知恵を借りたり、生き方を参考にした方が良い。

70代以上の人であれば、がんの手術はしない方がいい。がんの手術をすれば、確実に体力は落ちて老け込みます。

70代は、うつのリスクが高くなります(セロトニンの減少)。
認知症は病気ではなく老化現象の一つです。

医学は、発展途上の学問であることを忘れてはいけません。
苦しいよりも楽な方を優先するのも一つの考え方です。

(4)70代の危機を乗り越える

定年退職後は、いつまでもふさぎ込んでいるのではなくて、新たな仕事やボランティア、趣味の活動を始めることで、喪失感を克服します。

高齢になればなるほど、男性ホルモンも減少し、新しいことを始めることがおっくうになってきますので、その点からも、少しでも若いうちに趣味を見つけておくことは大切です。

介護を生きがいにすることは、介護者の心身を壊しかねない危険性があります。

在宅介護より在宅看取りという選択をします。在宅看取りとは、一般的にはがんのように死期がわかっている病気において、最期くらいは病人の好きなようにさせようと、慣れ親しんだ自宅で最期を看るというものです。

親の死がとてもこたえるという人は、親子関係に対する罪悪感を持っています。親が元気なうちに親孝行をしておけば、罪悪感に苛まれることを救ってくれます。

行動のすべてが「夫婦ふたりユニット」にならないように気をつけます。残されたパートナーがその後の人生を健やかに生きていく支えになります。

家族などまわりの人が、高齢者のうつのサインを見逃さず、適切に対処することが大切です。

男性ホルモンの減少は、他者へのかかわろうという気持ちを萎えさせ、好奇心や意欲といった生き生きとした部分、はつらつとした部分をその人から失わせてしまいます。

男性ホルモンこそ、若さの源なのです。男性ホルモン補充法があります(保険適用にはならない)

歳をとってやさしくなることが、幸せの近道です。

(5)感想

私は、61歳で70歳まであと9年あるとは考えずに、70歳というターニングポイントで無事にテイクオフできるように、今から意識して取り組めることは助走をしていきたいと思います。今、この本と出会えたことを感謝しています。

老いの格闘は、自分との闘いになります。人生の勝ち組か負け組と分ける必要はありません。全員、死に向かってどう生きるかという老いのあり方を自分で決めなければなりません。
生と死が背中合わせになって押しかけてきます。

70歳以降は、まさしく終活になります。拙著のしゅうかつモデルである就活、習活、充活の最後に終活を迎えることになります。自分の存在の証を残すという人生最大のイベントでもあります。終わりよければすべて良しです。オセロで言えば、出生は白、その後黒が続いても最後は白であれば、すべて白になるイメージです。


著者は、30年以上にわたって高齢者専門の精神科医として医療現場を携わっているので、提言内容には説得力があります。今までの健康の概念を一度リセットしないと老いと闘えないであろう。

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